「蛍」
「うん?」
窓の外を見ていた蛍が、ぱっとこちらを振り返る。
その瞳にまっすぐ見つめられて、唇がひどく乾いた。
「ずっと、俺と一緒にいてほしい」
自分でも驚くくらい真剣な声が出た。
蛍は少し驚いたように目を瞬いて、それから優しく微笑む。
「ずっと一緒だよ?」
嬉しそうに笑っているのに、その表情の奥に、ほんの少し寂しさが混じっているように見えた。
胸の奥が締めつけられて、俺は言葉を重ねる。
「…いつか、苗字を一緒にしよう」
口にした瞬間、蛍の目が大きく見開かれる。
「もう、私たちまだ中学生だよ」
冗談みたいに笑っているけれど、その笑顔がどこか苦しそうで、どうしてなのか俺にはわからなかった。
「わかってる。それでも、ずっと一緒にいたいんだ」
気持ちを抑えられなくて、真っ直ぐに伝える。
蛍は俯いて、膝の上で指をぎゅっと絡める。
「…うん。ずっと一緒だよ」
確かに聞こえたのに、その声は少し遠く感じられた。
観覧車はちょうど頂上に差しかかり、窓の外に街全体を見下ろす景色が広がっていく。
けれど俺の目には、その景色よりも蛍の横顔ばかりが映っていた。

