(凪side)
遊園地で蛍が乗れそうなものといったら、ゆったりと回る観覧車くらいだ。
蛍の前では格好が悪くて言えないけど、俺も絶叫マシンは苦手だ。
「わあ、すごい。みんなあんなに早いアトラクションに乗って、怖くないのかな」
髪を抑えながら、自分は乗ることのできないアトラクションを、楽しそうに見つめる。
君は、知っているのだろうか。
絵を描く時の横顔も、照れた時に髪をかけ直す些細な癖も、俺にとって、全部がたまらなく愛おしいことを。
「凪くん、ああいうの平気そうだよね」
「…多分な」
本当は乗れないのに、俺は嘘をついて笑ってみせた。
君の前では、どんなことでも強がってみたくなる。
「蛍、高いところは好き?」
「私は高いところは大丈夫。そういう凪くんは、高所恐怖症なの?」
「いいや。俺も高いところは平気。…じゃあ、観覧車に乗らないか?」
「うん!」
嬉しそうに破顔する君の顔が、俺は好きで仕方がない。

