「絵、描かなくていいのか?」
「…え?」
思わず、びっくりしてしまった。
もしできたら、と思ってスケッチブックや色鉛筆をカバンに入れては来たけど、凪くんには言っていない。
持って来たはいいけど、絵を描くのは時間がかかるし、一緒に来てくれた凪くんに迷惑がかかると思って、スケッチブックを取り出すつもりはなかった。
「せっかく来たんだし、絵描けばいいだろ?」
凪くんのほうから言ってくるとは思わず、私は何度か瞬きを繰り返す。
「でも、時間かかっちゃうし…凪くん、退屈でしょう?」
「別に、全然退屈じゃない。蛍の横顔なら、ずっと見てられるから」
そう言われて、私は少し恥ずかしくなりながらも小さく笑い返す。
「…じゃあ、絵描いてもいい?」
凪くんがうなずく。

