「わ、冷たい!」
私はワンピースの裾を少し持ち上げながら、海水に足を浸してみた。
ひんやりとした冷たさに少しびっくりしたけど、冷たくて気持ちがいい。
ひとりはしゃぐ私を、凪くんは少し離れた砂浜に座って見ていてくれる。
絶え間なく、ずっと先に広がる海を眺めていると、どこか吸い込まれそうな感覚がする。
多分この先、これ以上に綺麗な世界には出会えない。
ここに来れるのも、きっと最初で最後。
この景色を絵で残せても、波音や潮風の匂いは残すことはできない。
景色だけじゃなくて、音も匂いも、全てを余すことなく持ち帰りたい。
だから忘れてしまわないように、今感じている全部を、全身に刻みつける。
大きく深呼吸をして、目を開けた。
そのままゆっくり足を砂に押し付けながら、波打ち際を後にする。
凪くんのところまで歩くと、砂に座ったままの彼は、ふとこちらを見上げた。
「もういいのか?」
「うん、少し休憩」
私は凪くんの隣に座った。

