蛍火のような恋だった


「……蛍」

凪くんが私の手を握って、静かな声で名前をよぶ。

「…ん?」

私は小さく首を傾げた。

「蛍が好きだ。もう、どうしようもないくらいに」

そう言った凪くんは顔を傾けて、優しいキスを落とす。

その瞬間、胸の奥がきゅうっと熱くなった。

この時間が、永遠に続けばいいのにと思った。

凪くんが離れて行く。

そして私の答えを待つように、まっすぐな瞳を向けて来る。

「…あのね、凪くん。私、ずっと凪くんに隠してたことがあるの」

「…隠してたこと?」

凪くんの手に、力がこもる。

「私ね、生まれつき心臓に病気があるの。今まで何回も手術してきたけど、私の心臓、どんどん機能が落ちてるんだって。それでね、手術でも薬でも、もう治療は難しいってお医者さんに言われてるの」

凪くんは目を見開き、息を呑んだのがわかった。

「……何言ってんだよ。冗談、だろ?」

困惑と戸惑いが混ざった声。けれどその瞳は、私を離さない。

凪くんの顔を真っ直ぐみる。

「私、

「待てよ、だって今までそんなの全然…」

「…ごめんね、ずっと黙ってて。…本当なら、ずっと病院にいるはずだったの。それでも、学校に行ってみたくて、やりたいことが沢山あって…わがまま言って、今みたいな日常を過ごせてるの」

余命宣告をされていることは、どうしても言い出せなかった。

温かい凪くんの手が、小刻みに震えている気がする。

「もし病院にいたら、凪くんにも出逢えなかったし、こんなに楽しい時間も過ごせなかった。だから、私は自分の選択を後悔してない。…こんなこと話したら、凪くんは私と出逢ったこと、後悔するんじゃないかって、ちょっと怖かった」

「後悔なんて、するわけないだろ…」

凪くんの声が掠れていた。

「よかった。凪くんがくれた想い、すごく嬉しかったんだ。…私も、凪くんが好きだから」

私は小さく微笑む。