君ともう一度、 恋を始めるために

その後、どこから持ってきたのか莉奈が喜ぶような絵本やおもちゃが用意され、莉奈は部屋の片隅で遊び出した。
その様子を愛おしそうに見つめるお母様を見ながら、莉奈がもし涼の元へ行ってもきっとかわいがってもらえるのだろうと思えた。
もちろん、柚葉は莉奈を手放す気はないが・・・

「涼とは話をしているの?」
「・・・いいえ」
「それは、どうして?」

柚葉の答えを聞いて、涼の母は驚いた顔をする。

「私と涼さんは4年前に別れ、つい先日まで連絡をとっていませんでした。ですから、この4年の間に起きたことはお互いに何も知りません」
「でも、今日ここに来るまでに連絡をとるチャンスはあったでしょ?」
「それは・・・」

仕事で忙しい涼に負担をかけたくなかったのが一番の理由。
でも、本心は涼の反応が怖くて言えなかった。

「まずは涼に連絡をとりましょう」

そう言って涼の母が電話を手にすると、柚葉が立ちあがった。

「それはダメです。彼は今、仕事が大変な時で」
「家族は仕事以上に大切な物だわ」

柚葉の制止など聞く様子もなく涼の母が電話を掛けようとしたその時、慌ただしげに部屋の入口が開いた。

「奥様大変です、坊ちゃんが倒れられたとの連絡が」
「「えっ」」

柚葉と玲奈と涼の母の声が重なった。