君ともう一度、 恋を始めるために

初対面のせいか、柚葉と玲奈と涼の母の会話が弾むことはなかった。
お互いに言いたいことも聞きたいこともありながら、どう切り出していいのかがわからないようだった。

「奥様、お茶をお出しいたしましょうか？」
「そうね、お願いします」

その場の重い空気を感じたようかのに、執事らしき男性がティーセットを持って現れた。

「莉奈さんにはオレンジジュースをお持ちしましたが？」

よかったでしょうかと柚葉の方を見る。

「ええ、ありがとうございます」

家に使用人のいる暮らしなどしたことのない柚葉は戸惑いながらもお礼を言い、自分も用意された紅茶に口を付けた。
その瞬間、

「マルコポーロ」

思わずこぼれてしまった言葉。
口に出してしまってから、柚葉はしまったと口元を押さえた。