君ともう一度、 恋を始めるために

福岡から飛行機に乗り東京に着くと、玲奈が待っていた。
黒塗りの運転手付きの車に案内され、しばらく走って着いたのは都心の一等地。
高い塀で囲まれた中には緑豊かな庭が広がり、見えてきたのは大きな洋館。
その立派すぎる玄関の前に車は止まった。

「いらっしゃいませ」

車のドアが開かれ、執事らしき男性が柚葉に頭を下げる。
柚葉は莉奈を抱きかかえたまま、軽く会釈をして建物に入った。

―――うわあ、凄い

無意識のうちに、心の声が出てしまう。
広く開放的な玄関ホールに、アンティークの家具や絵画が荘厳な雰囲気を醸し出している。
まるで異世界に紛れ込んだような空間に息をのみ、柚葉の足も止まった。

「どうかした?」

突然立ち止まった柚葉に、玲奈が怪訝な顔をする。

「いいえ、何でもないわ」

柚葉はハッと我に返り、再び歩み出した。