君ともう一度、 恋を始めるために

「莉奈は私だけの子供です」

絶対に誰にも渡さない。
その思いを込めて、柚葉は断言した。

「涼も神崎のご両親も、血のつながった子供を手放すようなことはしないわ。そうなったら柚葉さんに勝ち目はない」
「だから、莉奈は私だけの」
「DNA検査、しましょうか?」

もし莉奈と涼の親子関係が公になれば、このまま穏やかに暮らしていくことはできないと覚悟はしている。
最悪、莉奈を奪われる可能性だってある。
だからこそ、そうならないためにも柚葉は急いで生活の基盤を整えるつもりでいた。

「ママー、お家帰ろうよ」

隣の部屋で遊んでいた莉奈が、柚葉の元に戻ってきた。

「そうね、帰りましょうね」

莉奈をギュッと抱きよせながら、柚葉は胸が締め付けられるような痛みを感じていた。
さすがにこのまま莉奈を連れ去るつもりはないだろうが、玲奈は今後も頻繁に接触してくることだろう。
そう思うと、柚葉は抜け道のない迷路に追い込まれたような気分だった。