君ともう一度、 恋を始めるために

福岡市内まで場所を移動し、連れてこられたのは高級ホテル。
先日涼と泊まった時のようなリビング付きのスイートルームに柚葉は案内された。

「どうぞ」

差し出された温かい紅茶。
柚葉は一瞬カップに視線を送ったもの、手を付けることはしない。
普段からあまり感情を表に出すタイプでない柚葉だが、今は珍しく怒っていた。

「そんなに怒らないでください。お子さんはあちらでご機嫌に遊んでいますから」
「そういう問題ではありません」

確かに、莉奈も柚葉も乱暴な扱いは受けていない。
どちらかというと客人のようにもてなされているが、柚葉と莉奈の意に反して連れらされたことに間違いはない。

「こうでもしなければ、柚葉さんは私と会ってはくれなかったでしょ？」
「だからって、こんな強引なやり方はないわ」

柚葉はギュッと拳を握りしめ、向かい合って座る女性を睨みつけた。