君ともう一度、 恋を始めるために

「頭を打っているのならCTはとってもらった方がいいんじゃないのか?」

ーーーえ?

聞き覚えにある声が誰のものなのか柚葉にはわかっていた。
同時に自分のすぐ後ろに立つ気配も感じ取った。
しかし振り返る勇気がでなくて、柚葉はその場に固まった。

なぜ?
どうして?
頭に浮かぶのは疑問符ばかり。
そして、この先の展開を想像するだけで、柚葉はこの場から逃げ出したい衝動にかられた。

「柚葉、こちらは?」

動けなくなった柚葉に祖母が尋ねる。

「私は神崎涼と申します。柚葉さんの友人です」
「そうでしたか」

きちんとした身なりの涼が名刺を差し出して挨拶するのを見て祖母は安心しているようだが、事態はそう簡単な話ではない。

「じゃあ、私は入院の準備をしてくるから、莉奈ちゃんをお願いね」
「ええ、ありがとう」

気を使ったのかどうか祖母は莉奈を柚葉に渡し病院を出て行き、柚葉と涼が残されることになった。