君ともう一度、 恋を始めるために

「ここでいいですか?」
「ええ、ありがとうございます」

タクシーが止まったのは病院の救急入口。
すでに何台かの救急車も停まっている場所で、柚葉はタクシーを降りた。
祖母からは、泣いてはいるものの意識もはっきりしていて元気そうだと聞いてはいたが、やはり莉奈に直接会うまでは安心できず柚葉そのまま駆け出した。
涼には申し訳ないけれど非常事態だし、このまま東京へ帰るために駅へ向かうのならタクシーに乗っていくだろうと思った。
後で状況説明をしなくてはいけないだろうが、今はまだ涼のことを気遣うだけの余裕がなかった。

「すみません、藤崎莉奈の家族ですが」

救急外来の受付まで行きスタッフに声を掛ける。
すると、ちょうど処置室から祖母に付き添われた莉奈が出てきたところだった。

「莉奈」
「ママー」

泣きながらかけてくる莉奈を、柚葉はギュッと抱きしめた。