君ともう一度、 恋を始めるために

一人で子育てをするシングルマザーだったせいもあり、今までの莉奈は常に柚葉の目の届くところにいた。
もちろん乳児期から保育園に通っていれば、熱を出すことも小さなかすり傷を作ることも時々はあったが、大きな病気やけがをすることもなく今日まで育ってくれた。
だからだろうか、いきなりケガをして救急搬送されたと聞いて、柚葉は動揺した。
必死に冷静を装いながらも、体が震えているのを自分でも自覚していた。

ーーーん?

いきなり感じた、右手の温もり。
見ると、隣に座る涼がそっと手を重ねていた。

「大丈夫だ」
「ありがとう」

相手が誰なのかも知らないはずの涼の言葉が、なぜか柚葉の心に響いた。
ただ側にいて、「大丈夫だ」と言ってくれる人がいることがこんなにも心強いのかと改めて知った。