君ともう一度、 恋を始めるために

涼に求められるまま連絡先を交換し、お互いにメッセージのやり取りをしようと約束した。
幸いなことに東京に住み日々忙しく働く涼が門司までくることはそう簡単なことではない。
おそらく年に数回しか会う機会はなさそうで、そのうちに涼の気持ちも離れて行くだろうと柚葉は思っていた。

「せっかく門司まで来たんだから観光をして帰りたいんだが、案内してもらえるか?」
「え、ええ」

莉奈は祖母にお願いしてきたため、まだ時間はある。
せっかくやって来たんだから観光をという涼の気持ちがわからなくもなくて、柚葉は承知した。

「じゃあまずは門司港の方へ」

そう言って席を立とうとした時、柚葉のスマホが着信を知らせた。
誰だろうと思っては画面を見ると、発信元は祖母の家。
とても嫌な予感がして、柚葉はその場で電話に出た。