「とりあえず、これは返すよ」

そう言って涼が差し出したのは、見覚えのある封筒。

「これはホテル代として」
「いらないよ。そもそも俺が勝手にとったホテルだし」
「それでも、あんな高いお部屋に泊まらせてもらったのは間違いありませんから」

柚葉は差し出された封筒をもう一度涼の方に押し戻した。

「とにかく、これは返すよ。もし受け取ってもらえないなら、何度でも持ってくる」
「え、それは・・・」

このまま受け取らなければ、おそらくお金を返すことを口実に何度でも柚葉の前に現れるつもりなのだろうと想像できた。
それは、柚葉にとって望まない展開だった。

「わかりました、お金は受け取ります。でも、これが最後にしてください」

お金は受け取る、その代わり二度と会いに来ないで欲しいと柚葉は言いたかった。

「どうして?」
「え?」

なぜかと理由を聞かれた柚葉の方が、ポカンと口を開けてしまった。