待ち合わせをしたのは門司港駅前のコーヒーショップ。

「いらっしゃいませ」

約束の時間ちょうどに店内へ入ると、すでに涼はいた。

「すみません、お待たせしました」

店の一番奥の通りに面した4人掛けの席に座る涼の前に、柚葉は立った。

「いや、俺が早く来ただけだ」
「そうですか」

柚葉自身、喜んでここまでやって来たわけではない。
どちらかというと、どうしようもなく選んだ選択だった。
もしこのまま拒否し続ければ、涼が柚葉の家までやって来てしまう気がして拒むことができなかった。

「とにかく座って」
「え、ええ」

いつまでも立ったままの柚葉の後ろには、注文を聞こうと店員がやって来ている。
このままでは迷惑でしかないと柚葉も気づき、涼と向かい合って座りブレンドコーヒーを注文した。