「もういい」

無言のまま数杯のグラスを空け、涼はやっと口を開いた。

「本当に、いいのか？」

訝しげな恭介の表情。

「いいも悪いも、今更どうしようもない。それに一番悪いのは、あの時柚葉を手放してしまった俺だ」

柚葉が涼にとって運命の人だったように、恭介も涼の人生の中でかけがえのない人間だ。
多少なりと恵まれた家に生まれ、いろんな思惑を持って近づいてくる人間が多い中、本当に信じられる友人と出会える事は珍しい。
少なくとも涼は恭介のこと一生を付き合える友人だと思っている。

「だが、隠し事は今回限りだ。今後同じことがあれば、俺は許さないからな」
「あぁ、すまなかった」

正直、恭介は優秀なビジネスマンだ。
数年後には神崎ホテルグループに呼び寄せて片腕として働いてもらうつもりだった。
そのことを踏まえて涼は今回のことを許そうと決めた。

「それで、柚葉は今どこにいる？それを教えてくれ」