「俺は、柚葉ちゃんが勤めていた風見鶏の常連だったんだ」
「という事は、お前は柚葉の居場所をずっと知っていたのか」
「あぁ」

その答えを聞いた瞬間、涼はグッと拳を握り締めた。
腹が立ったし、憎いとさえ感じた。
涼が柚葉を探していると知っていたのに、恭介は何も知らせてはくれなかった。
そのことに裏切られたような感情を覚えた。

「言い訳はしない。俺はお前を裏切っていた。殴るなり、縁を切るなり、好きにしてくれ」

視線をそらすこともなく、涼をじっと見つめる恭介のまなざしは、何か決意めいたものを感じた。
どんな思いがあったのかは別にして、恭介は恭介なりに覚悟しての行動だったんだろうと思えた。
だから、涼は何も言えなくなった。