ほどなくして連れてこられたのは、やはり高そうなホテルだった。

「こんな立派なお部屋、困ります」

神崎グループの経営するホテルの1室に入った瞬間、柚葉は慌てた。

「俺が泊まりたいからここにしたんだ。柚葉が気にすることない」
「そんな・・・」

涼が手配したのはホテルの最上階にあるスイートルーム。
大きなリビングに二つのベッドルームがあり、オシャレで広々した空間が広がっている。

「どんな部屋に泊まろうと最初から柚葉に部屋代をもらうつもりなんてないよ」
「それは、困ります」

それからしばらく、柚葉は不満そうに部屋の入口で立ち尽くしていた。

「いいじゃないか。もうすぐ終電も終わるんだし、諦めて今夜はここに泊まろう」
「・・・ずるいわ」

ギロリと睨む柚葉でさえ可愛くて、涼はついにやけてしまった。

「なんで笑っているの、私怒っているのよ」
「怒っている顔もかわいいよ」
「もうっ」

プッと頬を膨らます柚葉の顔が真っ赤になった。