少し時間を置き何とか歩けるまでに回復した柚葉は、涼とともに福岡の街に出た。
心地よい秋風が吹き抜ける橋の上で、二人は並び川を見つめる。

「俺はずっと柚葉を探していた。どんな理由があろうと、柚葉を失うことは考えられない」

もう柚葉を手放す気はないと伝えたかったのだろう。

「私だって、本当はあなたの側にいたかった。でも・・・」

柚葉は涙を浮かべ、言葉を詰まらせる。
その震える肩に、涼はためらうことなく手を伸ばした。

「もう迷わなくていい」

涼は静かに柚葉を抱きしめた。
そのまっすぐに向かって来る眼差しに、柚葉はどこかためらいがちに目をそらす。
うれしい気持ちはある半面、柚葉はやはり莉奈のことが気がかりで心から笑うことができなかった。