その後は、お互いの近況や世間話を楽しくしながら食事を終えた。

「そろそろ行こうか」
「ええ。あっ」
「柚葉ちゃん、大丈夫?」

恭介に促され席を立とうとした柚葉は急に目の前の景色が揺れ、テーブルに手を突いた。
動き出そうにも、足に力が入らない。

―――あれ、どうしたんだろう

食事の途中で何度かカクテルを勧められ注文した。
どれも甘くフルーティーで飲みやすく、数杯のグラスを空けた気憶はある。
しかし、強いお酒だとは聞いていない。

「このままじゃ帰れそうにないから、少し休んでから帰ろうか?」

恭介に支えられレストランは出たものの、足元のおぼつかない柚葉にかけられ恭介の言葉。
しかし、ここは福岡市内の高級ホテル。
この状況で休んでいこうと言われればホテルに部屋を取るいう意味なのだろうと柚葉にも理解できるし、さすがにそれはダメだ。

「私、帰るわ」

精一杯の力で恭介を押し戻そうとするが、柚葉は支えられたまま一人で歩くこともできなかった。