「私と莉奈のために、恭介さんに迷惑をかけられないわ」

思ってもみなかった提案に驚きながらも、柚葉ははっきりと拒絶の言葉を口にした。

「迷惑なんかじゃないよ。俺がそれを望むんだ」

この4年間、週に何度か風見鶏に顔を出してくれる恭介の存在が柚葉にとっては心強かった。
唯一気兼ねなく話せる友人のように感じていた。
しかし、そこに男女の恋心が存在した事は無い。
もっと言うならば、柚葉は今でも涼のことを思っていて、誰かと恋をしようなんて考えたこともない。

「付き合うのが無理なら、付き合っているふりをしよう。俺なら、莉奈ちゃんを守ってあげられるよ」
「そんな・・・」

あまりにも突然の申し出に、柚葉は応じることも断ることもできず恭介を見つめ返した。

「すまない、驚かせてしまったね」

柚葉の困惑を理解したのか、恭介もさらに追い詰めるようなことはしなかった。