「久しぶり」

約1ヵ月ぶりに会う恭介は以前と変わりなく、どこから見ても1流商社のエリートサラリーマンだった。
莉奈を祖母に預けて待ち合わせ場所である福岡のホテルまでやってきた柚葉は、高層ホテル最上階にある美しい夜景が見渡せるレストランへと入った。

「素敵な店ね」

いささか場違いな気さえするオシャレなレストランにためらいを感じながらも、柚葉は恭介と向かい合い座った。

「涼に会ったんだろ？」
「え、ええ」

いつになく真面目な表情で直球を投げてくる恭介に、柚葉は答えに困る。

「柚葉ちゃんが京都を離れた後、涼がやってきたんだ」
「じゃあ、やっぱり恭介さんが？」

予想はしていたけれど、やはりショックはある。
それに、もし莉奈のことも話してしまっていたらと不安になった。

「大丈夫、詳しいことは何も話していないよ。ただ・・・」

いつの間にか運ばれてきたシャンパンを片手に、恭介は話し始めた。