4年前あれだけ悩み苦しんで出した決心を、柚葉は貫くつもりでいた。
そのことで莉奈に寂しい思いをさせることになるかもしれないが、その分何倍もの愛情を自分が注いでやろうと決めていた。
正直、神崎ホテルグループの若き社長である涼の知名度はかなり高い。
メディアでの露出も少なくないし、そのルックスと手腕と実績からカリスマ的に報道されることも多い。
実際、『神崎涼』とネット検索すれば、恋人やフィアンセ、中には妻や子供とタイトルのついた写真だって何枚も上がってくる。
この４年間一切の連絡をとっていなかった柚葉には、何が嘘で何が真実かなんてわかるはずもないが、だからこそ自分はもう涼にかかわるべきではないと思えた。 

結局、柚葉は涼との約束の場所に戻らなかった。