「案外彼も、まだ柚葉のことが好きなのかもしれないわよ」
「そんな・・・」

涼の気持ちも聞かずに逃げ出したのは事実だが、当時の涼に玲奈との縁談があったのもまた真実。
もし仮に未練があるにしたって、柚葉と神崎グループの社長になった涼では住む世界が違いすぎる。
どんなに頑張ったって、幸せな未来が築けるとは思えない。
そんな環境に、莉奈を巻き込むことはできない。

「一度、相手の人と話をしてみるべきではないの?彼にだって知る権利はあると思うし」

涼のことだから、莉奈にとって不利益になるようなことはしないだろう。
もしかしたら血のつながった娘を愛してくれるかもしれない。
そう思ったら、柚葉は莉奈に対しても涼に対しても悪いことをしているような気持ちになった。

「考えてみるわ」

門司での生活が落ち着いたら彼に連絡をしてみよう。
柚葉はやっとそう決心した。
しかし涼との再会は、柚葉が想像するよりもずっと早く訪れた。