莉奈にとっての幸せとは何か？
改めて問われて、柚葉は当惑した。
自分と共に穏やかに暮らすことが莉奈にとって幸せだと思ってきたし、そのことを疑ったこともなかった。
しかし・・・

「神崎グループの娘として育つことを魅力的だと思う人もいるわ」
少し寂しそうに、優香は苦笑いする。

莉奈がそんな人間に育つとは思わないけれど、莉奈にとってのチャンスを柚葉が奪っているという見方があるのも事実だ。

「子供って、大人が思うよりもずっと物事を理解しているわよ」

普段保育士として働く優香だからこそ、どんなに小さな子供もちゃんと周囲を見ているから、だからこそ莉奈にもすべてを話すべきだと繰り返す。

「私は、まだ向き合う自信がないの」

柚葉の中で、まだ心の整理がついていない。
莉奈や柚葉の存在が涼の足かせになったらどうしようとの思いが強いのだ。