君ともう一度、 恋を始めるために

約束をした相手は、中学生時代からの友人佐倉優香。
柚葉は莉奈を連れて約束した下関駅前のファミリーレストランへとやって来た。
店内には子供を遊ばせるキッズスペースもあり、莉奈は店に入ると遊具に向かって行った。

「それで、このまま門司へ向かうつもりなの?」
「ええ、そのつもり」

優香は柚葉にとって唯一心許せる親友であり、当然莉奈の出生についても知っている人物。
普段門司に住む優香は、京都を引き払って帰ってきた柚葉のために駆けつけてくれたのだ。

「柚葉は、本当にそれでいいの?」

久しぶりに会った優香は再会の挨拶もそこそこに、とても心配そうな顔をした。

「他にどうしようもないじゃない」

心配してくれる親友に、柚葉の語気が強くなる。
きっと、親しい相手だからこその甘えが出たのだろう。
普段あまり感情を外に出さないはずの柚葉が、不満そうに唇を尖らせた。

柚葉だって涼のことは好きだ。
その思いは別れから4年経った今でも変わらない。
しかし、これは柚葉の気持ち。
そこに莉奈の存在や、これから神崎グループの代表として活躍する涼の人生が重なれば、自分の気持ち簡単に口にすることはできない。
だからこそ、逃げ出す以外に方法はないと思えた。