君ともう一度、 恋を始めるために

付き合っている頃には二人で色々なところに行った。
京都の神社仏閣や、大阪の下町。でも一番多くの時間を過ごしたのは通い慣れたカフェだった。
どちらかというと冷静で大きく感情を表に出さない柚葉が楽しそうに本の話をするのを見ている時間が涼にとっては幸せだったし、誰も知らない柚葉を独占しているようで心が躍った。
だからだろうか、子供の頃から世界各地を旅行してきたはずの涼も、柚葉と共にいる時間は別の世界のようだった。
柚葉がビジネス中心に生きてきた人生から解き放ってくれる存在に思えたし、この時間が永遠に続いてくれることを願っていた。
いつしか、これからも柚葉と共に生きていくのだろうと思うようになっていた。
しかし、柚葉が大学を卒業するころ、事態は大きく動き出した。