京都発の寝台列車で終着駅出雲市まで行き、そこから下関の実家まで特急列車で4時間の旅。
決して短い時間ではないだけに、さすがの莉奈も飽きたようで途中からゴソゴソと動き出した。
現在地を確認しようと、柚葉も停車した駅のホームに目を移す。
田舎駅とは言え、それぞれの地方へ向かう拠点駅はスーツケースを持った旅行客やビジネスマンで賑わっている。

「え?」

何気なく窓の外に視線を送っていた柚葉は、瞬間的に体がフリーズした。

―――・・・そんなはずは無い。

これから先の生活への不安を思っていたからか、それとも普段と違う風景が幻を見せたのか、理由はわからないけれどなぜか柚葉は涼らしき人影を見た気がした。

―――間違ってもこんな所で涼に会うはずなんてないのに・・・

こうして京都を離れる事は、マスターと恭介にしか話していない。
そう思いながらも、頭の中から涼が消えてくれなかった。
ちょっと柔らかで癖のある髪と、優しいけれど鋭い瞳。
4年前のあの日に別れた涼の姿を、柚葉は今でも夢に見る。
海外勤務を経て昨年神崎グループの社長に就任した涼は、おそらく面影だって変わっているはずで、きっと一瞬見ただけでは気づかないはずだと頭の中では理解できていても、柚葉は涼を追い求めるように窓の外に視線を泳がせる。
しかしどれだけ探しても、涼の姿は見つからなかった。