君ともう一度、 恋を始めるために

柚葉と莉奈のことを大切に守ってくれる涼との暮らしは幸せそのものだ。
新しい生活環境も、莉奈の小学校生活も、希望に満ち溢れていた。
そしてもう一つ、柚葉は大きな幸せを抱えている。

「柚葉、大丈夫か?」

うつむきながら水に手を伸ばした柚葉を、涼が気遣う。

「ええ、平気よ」

実は今、柚葉は2人目の子供を妊娠している。
出産予定日は8月の終わりで、莉奈にとっては弟か妹が誕生する。
神崎の両親に伝えると心配されそうでまだ話をしていないが、引っ越しも終わり安定期に入ったことでもあり東京に戻ったら涼と共に報告に行く予定だ。

「これからは無理をせず、体を大事にするんだぞ」
「ええ、わかっています」

柚葉を気遣って言ってくれているとわかりながらも、小言のような響きがあり柚葉がつい口を尖らせた。
しかし、こうやってわがままが言えるのも、甘えられるのも涼に対してだけ。
そう思えば、柚葉にとって涼は唯一無二の存在なのだ。
その存在が、今の柚葉を支えている。