君ともう一度、 恋を始めるために

少しだけ重たい空気が流れそうになった店内に、マスターお気に入りの洋楽が流れる。

「そう言えば、玲奈さんはアメリカで個展を開くんですってね?」
「ああ、向こうでの評判もいいらしい」
「そう」

自称フィアンセとして常に涼の近くにいた玲奈は、2年前涼と柚葉がやり直すと決心したのを機にアメリカへと渡った。
元々美大で油絵を専攻していた玲奈だったが、アメリカでさらに絵画を勉強して最近ではメディアで取り上げられるようにもなっている。

「今でも連絡を取り合っているの?」

できるだけさりげなく、醜い妻の嫉妬と見られないように柚葉は尋ねた。

「いや、この間経済界のパーティーで一緒になった時に速水のおじさんから聞いたんだ」
「そうだったの」

間違っても涼の誠実さを疑う気持ちはない。
しかし、今の涼は若き経済界のプリンスなどと呼ばれ色々な雑誌にも取り上げられている。
だからこそ、柚葉は時々不安になる時がある。

「柚葉以外の女性とは口も利かないよ」
「そんなこと」

―――できるわけがないじゃない。

焼きもちを焼く自分が恥ずかしくて、柚葉は言葉を飲み込んだ。