君ともう一度、 恋を始めるために

「お父さんは冷静に話をされていたよ」
「本当に?」

そもそも全ての責任は黙って逃げ出した柚葉にあり、涼が責められる理由はない。

「柚葉と莉奈を頼むと頭を下げられた」
「え、父が?」

―――頭を下げたなんて・・・

「なあ柚葉、俺は父親になってまだひと月も経たない新米だが、それでもわかるぞ。お父さんは柚葉のことを誰よりも心配していらしたんだ」
「そう、かもね」

莉奈を妊娠した時も、結婚はしないと話した時も、父は渋い顔をしただけで問い詰めるようなことはしなかった。
だからこそ余計に柚葉は心が痛んで、父との距離を置くようになってしまったのかもしれない。

「これからは二人で、お父さんにもたくさん親孝行しような」
「はい」

誰よりも忙しいはずなのに、柚葉にも莉奈にも、祖母にも父にまで気を使ってくれる涼。
その上旅館の再建についても色々と考えていてくれて、この人はいつ休んでいるのだろうと、不思議な気分になりながらも柚葉は幸せを実感していた。