君ともう一度、 恋を始めるために

「柚葉、そろそろ時間だ。出かけるよ」
「はーい」

迎えに来た涼に声をかけられ、仲間と話し込んでいた柚葉も慌てたように動き出す。

「そんなに慌てなくていい。ゆっくりでいいから」

病院を退院して半月。
旅館が休業中とはいえ、新年を迎えて慌ただしい日々に変わりはない。
当然涼は柚葉を気遣ってくれるし、柚葉自身も無理をするつもりはない。
しかし、今日は柚葉にとっても特別な日なのだ。

「わかっているけれど、お母様をお待たせすることはできないでしょ?」
「待たせておけばいいし、そもそも柚葉が空港まで迎えに行く必要はないんだぞ」
「そんな訳にはいかないわ」

先日、東京で初めて対面した涼の母。
上品で気品があって、まるで別世界を生きる人のようだった。
その人が、莉奈と柚葉に会いたいと九州にやって来るのだ。
柚葉は今、迎えに行くために空港に向かおうとしている。

「ママー、早く」
「はいはい」

莉奈に急かされて、柚葉は涼の運転する車で空港へと向かった。