そもそも4年前、柚葉は涼に突然の別れを告げた。

「もう、終わりにしましょう」
「本気か?」

意を決した柚葉の言葉に涼は驚き、顔をこわばらせ目を見開いた。
一瞬もそらすことなく注がれる眼差しは鋭くて、柚葉は負けそうな気持ちに気づかれないように奥歯をグッと噛み締めた。

それはちょうど柚葉の大学卒業の時。
同じタイミングで涼の海外勤務が決まったのだった。
当然のように涼は柚葉と一緒に渡航することを希望した。
住む世界の違いは感じながらもそばに寄り添いたい思いは柚葉も同じで、初めは涼と共に人生を歩みたいと思っていた。
しかし、ちょうど同時期に柚葉の妊娠が発覚し、それによって事態は大きく動き出した。
先々に不安は感じながらも涼と一緒ならば海外での生活も悪くないなと思っていた柚葉は、妊娠をきっかけに現実を思い知らされることとなった。