ガタン、ゴトンと大きく揺れる列車は、緑豊かな山中をかき分けるように走り続ける。
柚葉もなんとなく車窓へと視線をした。
こうして電車に乗るのは久しぶりだが、学生時代の帰省にはいつもこの列車を使っていた。
田舎だけに乗客は多くないが、その分のどかでゆったりとした時間が過ごせるのが気に入っていた。

「ママ、トンネルだよ」
「そうね」

柚葉の横に座る莉奈もとても楽しそうだ。
しかし、莉奈は自分の置かれている状況を理解してはいない。
きっといつか、自らの出生と父親のことを知りたいと思うだろう。
そうなった時、柚葉は隠すことなくすべてを打ち明けるつもりでいる。

―――莉奈は会ったことのない父親のことをどう思うのだろうか。

屈託なく笑う莉奈の横で、柚葉は複雑な思いだった。