君ともう一度、 恋を始めるために

柚葉が倒れた日から、本来なら静養中の祖母も柚葉に会うために病院へと通うようになった。

「お疲れがでませんか?」

病室に入ってきた看護師も、祖母の体調を気遣う。

「ええ、大丈夫です」
「そうですか、無理をなさらないでくださいね」
「ありがとうございます」

大切に守ってきた旅館が火事にあい、その心労で倒れてしまった祖母にとって柚葉は唯一頼れる存在だった。
その柚葉が倒れたと聞いた時には動揺し慌てたが、今は落ち着きを取り戻している。
そこにはそれなりの理由もある。

「ねえおばあちゃん、お兄ちゃんはいつ来るの?」
「明日の午後にはくるはずよ」
「ヤッター」

心底うれしそうに飛び跳ねる莉奈。
その姿を見ながら、祖母も口元を緩ませた。