君ともう一度、 恋を始めるために

「柚葉さん、しっかりして」

全身から力が抜け身動きもできないはずなのに、駆け寄ってくる足音と柚葉を呼ぶ声が聞こえた。

「おーい、誰か救急車呼んでくれ」
「早く、早くしろ」

騒然とする周囲の叫び声の中、柚葉は自分の体が地面へと崩れ落ちるのを感じた。
木枯らしに頬を撫でられる感覚と、倒れ込んだアスファルトの冷たさ。
柚葉は息苦しさの中で思いを巡らせる。

―――もしかして、私は死ぬの?

母が突然の最期を迎えたせいもあり、健康には気を使っているつもりだった。
まさか自分が突然倒れるなんて、想像もしていなかった。

「柚葉さん、しっかりして」

聞こえてくる悲鳴のような声をどこか他人事のように聞きながら、柚葉は意識を手放した。