君ともう一度、 恋を始めるために

「営業再開ももうすぐでしょ?」
「ええ、年明けの予定です」
「それは良かったわ。柚葉さんも無理しないで頑張ってね」
「はい。ありがとうございます」

営業再開を聞きつけた常連客からはすでに予約が入っているし、旅館の修繕もほぼ完了している。
祖母が復帰するにはまだ時間がかかりそうだが、それまでは自分が守っていくと柚葉は心に決めていた。
もちろん無理をするつもりはないが、自分が働かなければ旅館は立ち行かない。
それがわかっているだけに、柚葉は知らず知らずのうちに頑張りすぎていた。

―――どうしたのかしら、今日は特に風が冷たいわ。

少しでも早く莉奈の元に向かおうと歩みを速めた時に感じた風の冷たさ。
そして、普段とは違う不快感を感じて柚葉の足が止まった。

―――く、苦しい。

突然襲ってきた動機と胸を締めつめられるような息苦しさ。
身動きができなくなった柚葉は、その場に膝をついた。