君ともう一度、 恋を始めるために

「柚葉さん、あとは私たちでやりますから、今日は早く上がってください」
「うん、ありがとう」

旅館の営業再開に向けて、柚葉は寝る間を惜しんで働いた。
祖母の体調が万全でない今、自分が旅館を守るしかないとの使命感に駆られての行動だった。
そのことを知っているスタッフたちも、柚葉のことを気遣ってくれる。

「営業が再開されれば今よりももっと忙しくなるんですから」
「そうですよ、莉奈ちゃんが待っていますから、帰ってあげてください」

確かに、最近の柚葉は朝早くから夜遅くまで働き詰めだった。
旅館の再建と祖母の看病と莉奈の世話とで、息をつく暇もないほど忙しかった。
当然、莉奈にも寂しい思いをさせてしまっている。

「じゃあ、今日はお先に失礼するわ」

せっかくだからみんなの言葉に甘えさせてもらおうと、仕事が一段落したのを見計らって柚葉は旅館を後にした。