君ともう一度、 恋を始めるために

「子供を連れ去ったり、お前のおふくろさんを巻き込んだり、随分汚い手を使っていたようだ」

行動力があり社交的で経営者の娘として申し分のないスキルを持つ玲奈とは、子供の頃から何度も顔を合わせた幼なじみのような関係だった。
両家の親同士が『いつかは一緒になってほしい』と望んでいたことも知っている。
しかし涼は玲奈との結婚を了承したつもりはないし、４年前には「好きな人がいる。いつかはその人と結婚したい」と父に伝えてもいた。
まだ半人前の涼が柚葉を連れてヨーロッパに行くことに反対した父も、恋愛や結婚そのものに反対してはいなかったし、玲奈とのゴシップについて放っておけばいつかは自然に消えていくと思っていた。

「俺の考えが甘かったのかな？」
「そんなことはない。俺も玲奈がここまでしているとは思っていなかった」

報告書を作り上げた恭介もかなり驚いているようだ。