君ともう一度、 恋を始めるために

「今日は本当にありがとう」

莉奈を寝かしつけた後、2人分のコーヒーを淹れた柚葉は涼に感謝を伝えた。
どちらかというとコーヒーよりも紅茶を好む柚葉にしては珍しくドリップしたコーヒーの香りが部屋の中を漂っている。
その香りに懐かしさを感じながら、柚葉は涼と並んだ。

「それは、昼間のこと?」
「それもあるけれど・・・」

涼がいなければ旅館を巡るトラブルは大きくなっていたと思う。
確かに助けられたし、感謝もしている。
しかし、柚葉の言いたかったのは莉奈に対する態度だった。

「莉奈に、優しくしてくれてありがとう」

今まで柚葉以外の家族と過ごす時間がなかった莉奈には、幸せな時間になったはずだ。
実際莉奈が、とても楽しそうだった。

「できることなら、このまま家族になりたいな」
「え?」

柚葉は顔を上げ、涼を凝視した。