君ともう一度、 恋を始めるために

この数ヶ月、突然やってきた柚葉や莉奈にも近所の人たちはいつも優しかった。
温かく受け入れてくれて、莉奈もこの街が気に入っているようだった。
それなのに、今は険しい顔で柚葉を睨んでいる。

「よろしければ少しお時間をいただけませんか?」

騒然とした雰囲気の中、速水不動産を名乗る男性がさらに声を掛ける。
本当ならきっぱりと断ってしまいたいところだが、そんなことをしてもし入院中の祖母のところに押しかけてこられたら余計に困ってしまう。
なんとかして誤解を解きたいと思いながらも、柚葉にはなすすべがなかった。

「忙しいようだから、私たちは失礼しましょう」

完全に誤解してしまった近隣の店主たちも、動き出した。
このままではいけないと思いながら、柚葉は途方に暮れていた。
その時、男性がもう一人入って来た。