「ところで、今回の件はやはり誰かの嫌がらせでしょうか?」
「それは…」

今はまだ警察や消防の調査が入っているところだからはっきりしないが、漏電や自然発火などの事故ではなさそうだと柚葉も聞いている。
そうなると、誰かが火をつけた可能性が大きくなる。
もちろん祖母が誰かに恨みを買うことは考えられないが、逆恨みをされた可能性はある。
それにもし、その原因が自分であったらと思うと気が気ではない。

「最近は嫌がらせのようなメールも来ていましたし、大量の予約を入れて直前ですべてキャンセルするのも営業妨害です。この機会にきちんと調べてもらった方がいいですよ」
「そうね」

ーーーでももし、今回の件が涼に関係する人によるものだったら・・・

旅館のことを心配してくれるスタッフにありがたいなと思いながら、柚葉はやはり不安になった。
その時、片づけをしていたスタッフに声を掛けられた。

「柚葉さん、お客さんですよ」
「え、お客さん?」

柚葉は不思議に思いながら、旅館の玄関へと向かった。