【短編】恋は月夜に舞い降りる【砂糖菓子より甘い恋-

「毬、帰ろう」

龍、といわれる方の声が耳に優しく響きました。

「どうして?
お姫様探し、止めちゃうの?」

「いいの。
それはこれから雅之が一人でやるって、ね?」

雅之……。
この方のお名前は雅之って言うのですね。

「えー、そんなのずるーいっ」

子供じみた声が河原に響きます。

ひょいと、龍がその子を抱き上げました。

「龍星、ありがとう」

雅之が呟きます。

「いや」

龍星の声が、風に浚われて消えていきました。