【短編】恋は月夜に舞い降りる【砂糖菓子より甘い恋-

「雅之、狸が好きなの?」

首をかしげている彼女の声も、もう私の耳には入りません。

「……いや……。
なんだか、懐かしい気がして」

懐かしいですって?

私のことが、懐かしいですって?

私の心臓がことりと跳ねます。

昨日の私だと、気づいて欲しくないという想いと。

昨日の私だと、知って欲しい気持ちが。

心の中で交錯して、ぎゅっと私の心を、何度も何度も練り上げていくのです。

はらはらと、流れる涙が止まらない。