「龍、どうしよう。
私、狸さん泣かせちゃった」
そんな私を見て、毬と言われたその人が困った声を出しました。
「毬、狸は鳴くことはあっても泣くことなどないよ」
龍という人の艶やかな声が耳へと注ぎ込まれます。
「でも……」
そのときです。
私の身体を、あの笛の音を思わせるような優しい香が包み込んだのです。
「毬、この子見せて?」
言い終わる前にもう、あの方は私の身体を彼女の手からかっさらっていらっしゃいました。
ああ、昨日幾度も聞いた。
それは愛しいあの人の声。
私の身体は震えます。
折角姫君でいたかったのに。
ついにあの方に姿を見られてしまった。
どうしたらいいのでしょう。
おぞましい姿を、あの方に見られてしまった……。
私、狸さん泣かせちゃった」
そんな私を見て、毬と言われたその人が困った声を出しました。
「毬、狸は鳴くことはあっても泣くことなどないよ」
龍という人の艶やかな声が耳へと注ぎ込まれます。
「でも……」
そのときです。
私の身体を、あの笛の音を思わせるような優しい香が包み込んだのです。
「毬、この子見せて?」
言い終わる前にもう、あの方は私の身体を彼女の手からかっさらっていらっしゃいました。
ああ、昨日幾度も聞いた。
それは愛しいあの人の声。
私の身体は震えます。
折角姫君でいたかったのに。
ついにあの方に姿を見られてしまった。
どうしたらいいのでしょう。
おぞましい姿を、あの方に見られてしまった……。


