「龍ー、これ、見て?」

私を持ち上げたその人が、首を傾げてそう言います。

龍、というのがあの方のお名前なのでしょうか。

いえ、違います。

もう一人の殿方が血相を変えて私のほうへと近づいてきます。

「毬、どうして明かりも持たずにここまで来た」

その声には、私があの方から貰いたいような愛しさと思われる響きがぎゅぎゅっと詰まっていて、【毬】でもないのに私の心臓が、くっと疼きます。

「だって一人で待ってるの退屈なんだもん」

私を持っているその人は、まるでそんな心の痛みなんて無いかのように、不服げに唇を尖らせていました。

……なんて贅沢なのでしょう。

私の瞳からまた、はらはらと涙が零れます。