私は映画やテレビドラマ以外で起こるリアルなキスシーンっていうのを初めて見たのだった。





しかも同じグループに在籍するメンバーの。





いくつもの段ボールや、おそらく荷造りの途中と思われる様々な生活用品が散らばり、足の踏み場も無い中、私の良く見知った雫は仰向けになっていて、その上に覆い被さるように私の知らない派手な若い男がいる。




二人はお互いの手を握り合い、目を閉じて唇を重ね合わせていた。






私は呆然と、ただその光景を見ているしか出来なかった。








だけどそんな散らかり具合の部屋の中、何かを踏んづけたのか、足の裏に鈍い痛みを感じ、つい声を上げてしまった。




「痛ッ。」





すると、先に私の声に気づいたのは雫の上に居た若い男の方で、雫から唇を離したかと思うと、瞬時にこちらを見て、私の存在を確認するや否や……