………………………。
返事は無かった。
「多分それじゃ聞こえない…もっと大きな声で呼んでみれば?」
「そっか。そうだね。」
私は大きな声を出す為、スッと息を吸った。
─────その時。
ガタガタッ!
何かが崩れ落ちるかのような物音が聞こえ、その音に混じって微かに雫の声が聞こえた気がした。
それは脆弱ながらも、確かに悲鳴のように私には聞こえていた。
急に嫌な予感がして、咄嗟に自分の胸に抱えていたオリエンタルリリーの鉢植えを、強引に胡兎へ引き渡し、急いで靴を脱いだ。
「へっ!?…ちょ、ちょっと!朱理ってば!」
うろたえる胡兎を尻目に、物音のした方に向かって走り出す。
向かった先には電気のあかりがついている部屋があり、そのあかりを見た瞬間、きっとそこに雫は居るっていう確信を抱いた。
“雫、お願い、どうか無事でいて──。”
勢いよくその部屋のドアを開けると、私はそこで自分の人生で初めて見る光景に出くわした──。
