レッスンルームに入ると、ダンスの練習の為の音楽がステレオから流れていた。
凄くメロウなR&B。黒人女性ボーカルの哀しげな歌声と相まって雫の物憂げな表情は、この上なく切実に私の胸に迫るものがあった。
「どうしたの雫?…疲れちゃった?」
私の問いかけにハッとしてこちらを向いた雫はかなり驚いた表情に変わる。
「わっ!…ビックリした。朱理だったんだ。」
…そんなにびっくりされるとは心外だった。
けどそのくらい酷く思い詰めていたのかもしれない。
先程の食事会でも、心苦しい気持ちは隠して明るく健気に、嬉しそうに取り繕っていたのかと思うと、私は更に胸が苦しくなる。
「ね、朱理。私、今日は早めに切り上げて帰っていいかな?」
雫の申し出に、私はそれが何の為なのか、すぐにピンときてふたつ返事でOKする。
「うん、良いよ。柊子さんから聞いてるから。」
